【25年かけて気付いた業界の洗脳】板金塗装の見積もりソフトが無いと見積もりが立てられない自分に気付いた日 — 指数・時間単価という「業界の当たり前」を疑い始めた瞬間

・ 執筆:中野 文人(合同会社 毘沙門坂 ナップファクトリー 代表)

この業界に丁稚で入ってから数えると、もう25年近くになります。

入った時の工場は小さいながらに、見積もりソフトがあって、CDチェンジャーがガッチャンガッチャン動いて、部品データだの、工賃だのを表示していました。
「へぇ、板金塗装の見積もりってすごいなぁ、ちゃんとしてるんだなぁ」と思ったのを今も覚えています。
今思えば、この時点で自己洗脳が始まっていたんですね。

「プロに褒められる見積もり」という名の、最初の洗脳

そして、従業員ながら見積もりを任せてもらえるようになり、
ソフトで見積もりを作って、保険会社のアジャスターに教えを請い、「ここはこうした方が良いよ」なんて言われて、プロから教えてもらった自分は凄い!!と。

見積もり勉強会なるものにも積極的に参加して、左側の項目からひたすら書くとか、指数に含まれていない作業をどうやって見積もりに入れるか、みたいなことを必死でやっていました。

保険会社と協定する見積もりが、全ての頂点だみたいな感覚。
完全に自己洗脳完了・・・。

保険金受取人の権利なんて全く意識もしていなければ、損害額算出と修理見積もりの違いに対する正しい知識もない。
ただの、「自称」見積もりがうまい人。「俺の見積もりは高いっ。すごいだろ。」
今思えば、無知っていうのは本当に恐ろしいです・・

「ディーラーさんが○○円なら、うちもそんなもの」

この頃は、時間単価(もっと正確に言えば指数単価ですね)に対する疑問などあまり持っていませんでしたし、
ディーラーさんが○○円なら、まあうちはそんなものだね。と妙に納得していました。

そして月日は流れ、自分で工場を持ち、利益というものと本気で向き合うようになってくると、どうにも利益が残らない

「設備投資の無限ループ」という底なし沼

じゃあ、もっと見積もりのテクニックを上げて、論破しないといけないんだと。
でも、逆に論破されるわけです。

「この指数はブースがある前提ですよ」

完全な塗装ブースをまだ導入できていない自分ところが悪いんだ。
→ブース入れる。

「次はフレーム修正機がある前提ですよ」

→それも入れる。

「スポット溶接機もある前提ですよ」

→入れる。

前提条件となるものをひたすら追い掛け回して、工場は移転を3回し、
最後は土地ごと買ってドーンと新築
車両の入れ替え時間も最低限になるぞ。
トイレも作業場内に作ったぞ。

これ以上の「合わせ方」はもう無いぞ。

それでも、合わない・・・・・。

「理解はできる。でも、納得できない」

このあたりで、どんなに指数とか、時間単価のルール(本当はそんな法律ありませんけど)を説明されても、分かるけど、納得できない。
どんなに理解できても、納得はできない状態になってきました。

なぜなら、見積もり理論や、知識としての指数テーブルの定義より、
とにかく従業員に給料を払って、自分も食っていかないといけないんです。

そこで、もう保険とか、事故に関係ないことをどんどんやっていこうと舵を切り始めたわけですが——

いざ、見積もりを作ろうとしたら——手が止まりました。

そんな仕事の相談があって、「見積もりいくらになる??」って言われた時。
いつもの見積もりソフトを立ち上げて、さあ見積もりを作ろうと。

見積もり作成、一切できない、進まないんですね。

ソフトに選択肢が無い。

なぜなら、そんな作業自体を選ぶところも無ければ、もちろん指数もありません。
部品を一から作るところなんか、その部品自体を選択することも出来ない。
作業項目も無い・・・・
材料費、塗装作業×%?? えーと、これ塗装作業じゃないぞ・・・・・

あれ、これどうやって値段出したらいいんだ?

その時、頭によぎるのは、
「よそならいくらでやるんだろう」
突発的にググっていた自分がいました。

ソフトに選択するところが無かったら見積もりを立てれない自分に気付いた瞬間。

見積もりってなんだ? 俺のやってきた見積もりってなんだったんだ??

「自由経済の中で、指数見積もりの洗脳に囚われていた」

この辺りのタイミングから、自由経済の中で、指数見積もりの洗脳に囚われていたことに少しずつ気付き始めたのでした。

そして、板金塗装業を経営する中でずっと自分の中にあった違和感の原因にも気付き始めたのです。

続く。。
次回:「指数」の正体と、15年かけてたどり着いた『自分で値段を決める』という、本来ごく当たり前の話。

空テック 相談する